未来スクール事務局
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キャリア教育を社会貢献の先へ。経営戦略としてのキャリア教育とは?(前)

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「探求型キャリア教育で、働く喜びを高める」。そんなメッセージが強く心に残る1日となりました。

6月に開催された未来スクール2026年度キックオフイベントでは、未来スクールの黎明期よりキャリア教育の原型として大変参考にさせていただいてきた福井県の清川メッキ工業株式会社 取締役副社長の清川卓二さんにご講演いただきました。清川メッキ工業は、福井県におけるキャリア教育の第一人者。清川さんは「育てる経営」を推進し、メッキ教室や地域と子どもをつなぐアントレ・キッズなどを実践的な取り組みを立ち上げてきました。講演内容は、単なる社会貢献の枠を超え、「経営戦略としてのキャリア教育をどう進めるか」について。本記事ではその前編をお届けします。

「社会貢献」だけでは続かない。キャリア教育を継続させる“次の手立て”

清川:弊社は家族経営で創業63年、400人規模の企業です。社員はほぼ福井県民。地域貢献をしたくて会社を経営しています。昨年は 一般社団法人人を大切にする経営学会が主催する「日本で一番大切にしたい会社大賞」で内閣総理大臣賞を受賞しました。

弊社は2005年から地域の子どもたちに職業体験の機会を提供するキャリア教育「アントレ・キッズ」を立ち上げてきました。そこから見えてくる未来スクールの現状と今後についてお話させていただきます。

ここにお集まりの皆さんは、未来スクールの活動に賛同されていらっしゃると思います。しかしどんな素晴らしいキャリア教育授業でも、活動が拡大すると疲労が生じて、社会貢献というだけでは継続性に疑問を持つ人が出てきます。そこで次の手立てが必要になります。

それがリーダーを育成し、経験を積んで継承者を増やしていくことです。

一人ひとりが「パーパス」を設定する

清川:ではどうやってリーダーを育成するのでしょうか。企業にはそれぞれ企業理念があります。これは創業者の想いを受け継ぎ、価値観を共有することで組織の強固な土台を築くものです。そこから進むと、社会課題を解決しながら利益を生む「CSVの時代」になります。

このように現代において企業の存在意義は、時代の変化に応じて企業の存在意義を問い直し、進むべき方向を示すものになります。

そこから進んだ現代は「パーパス経営の時代」と言われ、企業だけでなく、一人ひとりが「自己パーパス」を持つことが大切になっています。自己パーパスとは、自分は何のために存在するのかを考え、向き合うべき課題を自分事として捉えることです。

ただし、すべての社員が同じパーパスを持つ必要はありません。無理に一致させようとすると歪みが生まれ、不安につながります。それぞれ異なる想いを持ちながらも、共感できる部分を見つけ、少しずつ共有しながら広げていくことが、組織づくりやリーダー育成には大切です。

弊社の企業パーパスは「独創の技能で、世界を広げてゆく」です。「技術は会社に残るもの、技能は人に残るもの」という考えのもと、一人ひとりが技能を磨き、自らのパーパスを持つことで、社会に新たな価値を生み出していくことが企業の力になります。

また弊社では社員一人ひとりが自分の存在意義や目指す姿を言葉にするため、「個人パーパス」を設定しています。一人ひとりが「ビジョン・パーパス(存在意義)」や「ミッション」を、自分自身の言葉で考えます。

ここである社員の個人パーパスを紹介します。彼は入社当初、「ビジョン・パーパス(存在意義)」については、自分自身を中心とする内容でした。ちなみに、「ビジョン・パーパス(存在意義)は否定するものではありません。

しかし弊社のキャリア教育活動に取り組み、子どもたちと深く関わる中で、彼の中に変化があり、「自分のポジティブさを周りに伝えたい」という意識へと変わっていきました。つまり社員として、地域の一員として、親としてなど、自分の役割にも目が向くようになったのです。このように個人パーパスが確立すると、人にも良い影響を与えられるようになり、本当の働く意味が見えてきます。一体何が変化をもたらしたのでしょうか。後のお話を聞いていただくとわかると思います。

教育は福利厚生ではない。経営そのものである

清川:さて弊社がキャリア教育を始めたきっかけは、高い離職率。創業当初は新卒採用がなく、事業拡大とともに新入社員を迎えるようになりましたが、「仕事は見て盗め」という風潮の中、教える時間もなく、失敗しても質問しても叱られる環境で、多くの若手社員が辞めていきました。

教える側の社員も疲弊し、「自分たちの仕事には魅力がないのではないか」と自信を失いかけたことから、人を育てる仕組みとしてキャリア教育に取り組むようになりました。

教える側の社員も疲弊し、「自分たちの仕事には魅力がないのではないか」と自信を失いかけたことから、人を育てる仕組みとしてキャリア教育に取り組むようになりました。

具体的な取り組みとして始めたのが「メッキ教室」です。社員の子どもたちを会社に招き、マジックで絵を描いたプレートにニッケルメッキや金メッキを施して、オリジナルのキーホルダーを作る体験を行いました。

みなさんご自身も振り返っていただきたいですが、仕事に一番誇りを持てるのは、家族から『すごいね』と言われるときではないでしょうか。

「メッキ教室」を通して、子どもたちにわかりやすい言葉で仕事を説明し「お父さん、すごいね」と声を掛けられたことで、社員の仕事に対する誇りが大きく育ちました。それとともに、企業理念が少しずつ浸透し、自分は何のために働いているのか、この仕事は社会の何に役立っているのかを考える「自己パーパス」が芽生えていきました。その結果、新入社員への接し方も柔らかくなり、人間関係が改善。離職率も大きく低下していきました。

この活動は学校へと広がりました。子どもたちが持ち帰ったキーホルダーをきっかけに学校から依頼が入り、若手社員が出前授業を担当するようになりました。

子どもたちに「何のために働くの?」と聞かれたとき、「お金のため」だけでは伝わらない。その経験を通して、自分自身の働く意味やパーパスを改めて考えるようになったといいます。社員が地域や社会とつながることで、会社への誇りや責任感も育まれていきました。

(後編へ続く)

Written by

ヘメンディンガー綾

ヘメンディンガー綾さん

編集者・フリーライター。より良い教育環境を求めて、大阪府から和歌山市内に移住。歴史的・文化的な遺産と自然の恵みが溢れ、人も温かくて優しい和歌山で育児と仕事を楽しんでいます。

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