和歌山トヨペット株式会社で能力開発室に所属する藤井邦夫さん。主に採用や整備作業のOJT、仕事体験の企画・運営などに携わる一方、未来スクールではサポートスタッフとして活動しています。
当日の会場設営や写真撮影、職業先生のサポートなど、職業先生がスムースに授業を届けられるように奔走する藤井さんは、未来スクールを支える頼もしい存在です。
「子どもたちの未来を、大人も一緒につくってほしい」。そう語る藤井さんに、未来スクールへの思いや、サポートスタッフとして感じていることをお聞きしました。
未来スクールに関わるようになったきっかけをお聞かせください。
2022年、企業としてSDGsに関わるべきではないかという話が社内で出ていた時期に、和歌山市のSDGs推進ネットワークの取り組みに参加しました。その中で、未来スクールの案内がメールで届いたんです。そのメールを見た瞬間に「これだ」と思いました。
そこで、2022年8月のキックオフミーティングに参加しました。これまでの取り組みの紹介のプレゼンを見て特に印象に残ったのは、大人が子どもたちに「あれをしなさい、これをしなさい」と教え込むのではなく、子どもたち自身の心をくすぐり「やってみたい」「もっと知りたい」と思わせることを大切にしているところです。
弊社でも2013年から中学生・高校生の仕事体験を受け入れていました。ですから「子どもたちの視野を広げる」ということにはずっと関心があったのですが、「もっと知りたい」と思わせるような授業になっているところが素晴らしいと思いました。
また未来スクールを通していろいろな仕事や、そこで働く大人たちに出会える点も素晴らしいと思いました。「早い段階で仕事を知ること」は大切です。知らない仕事は、そもそも選択肢に入れることができませんから。これは採用担当としても日々感じています。
どのような経緯からサポートスタッフとしての参加となられたのでしょうか?
職業先生として参加することも考えていましたが、まず他の企業の皆さんがどのようなプログラムを実施しているのかを勉強したいと思いました。
職場体験の受け入れの経験はありますが、未来スクールのように企業側が学校へ出向き、限られた時間の中で仕事を伝えるという経験はありません。
特に自動車業界での仕事というと「整備」というイメージが強いと思います。私自身も、元は整備士ですので、車が走るという当たり前を支えている整備士の仕事があることを知ってほしいという思いもあります。
ただ、50分程度の授業の中で、整備の仕事を安全に体験してもらうプログラムをつくるのは簡単ではありません。そこで、サポートスタッフとして参加しながら、他の業種のプログラムを見せてもらい、自分たちに何ができるのかを探っていきたいと思いました。
サポートスタッフとして、毎回どのようなことをお手伝いされていますか?
主に、当日の準備・撤収のサポートと、写真撮影です。授業当日は、続々と集まってくる職業先生が学校に到着する前にスタンバイして、荷物を一緒に運び、控室や教室への案内をします。教室の机や椅子を動かしたり、パソコンがうまくつながらないときには学校の先生と一緒に対応したりします。
授業が始まれば、1つの教室につきっきりになるのではなく、校内を巡回します。学校は広いので、1階から4階まで走り回っています。1日にたくさんの企業が参加する場合には、それぞれの職業先生の授業を均等に撮影できるように、時間を確認しながら移動します。
特に初めて参加する職業先生は、当日になって戸惑うこともありますから、できるだけ先生が授業に集中できるようにこちらから「何か手伝いましょうか」と積極的にお声がけしています。
そして、もう1つは写真撮影です。
カメラは、「その瞬間を止められる」道具です。授業中の子どもたちの表情や、後ろ姿から楽しさが伝わってくるような瞬間をできるだけ残したいと思っています。

サポートスタッフとしてのご協力のみならず、ご寄付もいただいていると伺っています。寄付に至る経緯についてもお聞かせください。
未来スクールの活動を継続し、さらに広げていくためには、当然ながら費用も必要になります。そこで会社としても長く支援していきたいと考え、寄付という形での協力につながりました。5年、10年といった期限を区切るのではなく「この活動が続く限り、ずっと関わりたい」と考えています。
支援を通して、和歌山トヨペットという会社を知ってもらうきっかけにもなればと思っています。ただ、それはあくまでも後からついてくるもの。まずは、この活動そのものを継続していくことが大切だと考えています。
社内では未来スクールをどのように位置づけ、応援されているのでしょうか。
現状、社内での未来スクールに対する知名度や理解度をどんどん広げている段階です。私がサポートスタッフとして参加していることや、寄付を始めたことなどを社内広報に掲載しました。
弊社の社員の多くは家族を持つ子育て世代です。だからこそ、子どもたちの将来については、決して無関係ではありません。私は学校だけでなく、家庭の中でも子どもたちが社会を知ることが大切だと思っています。
最終的には、全社員が未来スクールのことを知って、説明できるようになってほしい。そして、その社員が自分の子どもや家族に未来スクールのことを伝える。そうなれば、活動が雪だるまのように少しずつ大きくなっていくのではないでしょうか。それが街ぐるみの教育につながっていくのだと思います。
「サポートスタッフ」という立場で参加されているからこそ、感じることや面白さはありますか?
職業先生は授業を行うことが役目ですが、サポートスタッフは全体をサポートするのが役目です。その中でいろいろな職種や経歴を持った職業先生の授業を垣間見ることができて、私自身も毎回新しい発見があります。「和歌山にこんな職業があるんだ」「こんなに熱心に仕事をされている方がいるんだ」と驚くことが本当に多い。そして皆さんに共通しているのが、子どもたちに想像力や視野を広げてほしいという熱意です。それが、授業をしている姿から自然と伝わってきます。
地域の子どもたちや企業の皆さんと関わる中で、藤井様ご自身が「学んだこと」はありますか?
改めて感じたのは、和歌山には本当にたくさんの仕事があるということです。造船や自動車部品をつくっている会社もあります。有名な高級車のフロアマットをつくっている会社もあるんですよ。
以前、未来スクールの活動の中で「かっこいい大人を見せる」という言葉を聞きました。それがとても印象に残っているのですが、大人が「和歌山には何もない」と言ってしまえば、子どもたちはどう思うでしょうか。こうした発想があるから子どもは夢をなくすんだと感じることがあります。
和歌山には一生懸命働いている人がいる。こんな仕事をしている会社がある。そんな人たちが活躍しているんだ、と知ってもらう。知らなければ比べられないし、考える材料にもならない。知らないことほど不幸はない。「知る」ということは本当に大切だなと改めて感じています。

未来スクールに対して期待されることや、参加を検討している社会人・企業様へのメッセージをお聞かせください。
未来スクールは和歌山市の全校を対象に、定期的に開催されるようになってほしいですね。そして、将来的には他の地域にも広がっていってほしいと思っています。
そのためにも「職業先生」がもっと増えたらいいなと思っています。和歌山には、ものづくりをしている会社もたくさんあります。本社が和歌山になくても、和歌山で活躍している企業もたくさんあります。学校の先生だけではなく、このようにいろいろな仕事をしている大人がそれぞれの「旗」を立てて、子どもたちから見えるようにする。その旗が一本ではなく、二本、三本、もっとたくさん見えるようになれば、子どもたちは「こんな道もあるんだ」と気づくことができます。
そのためには大人の我々が子どもたちに一歩近づいて未来を届けていくことが大切ではないでしょうか。子どもたちの未来をぜひ大人も一緒につくってほしいなと思います。