未来スクール事務局
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(学校法人山本学園内)
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職業先生参加19社、受講生徒300名超!最大規模の未来スクール開講 !

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2026年2月10日、和歌山市立紀之川中学校で今期最大規模となる未来スクールが開講されました。紀之川中学校での開催は今年で3年目を迎えます。紀之川中学校では今年度から1年生が未来スクールを受講し、2年生で職業体験を実施するという体系的なキャリア教育に向けた取り組みがスタートしました。1年生で働く大人のたちの真摯な姿勢や熱量に触れて、将来への視野を広げ、2年生で実際に現場を体験する。この「段階的なステップ」を踏むことで、生徒一人ひとりが問いを持って職場体験に挑む「探求型キャリア教育」へと昇華されます。そのため、今年は1年生と2年生が同時に未来スクールを受講し、304名の生徒たちが和歌山で働く多様な職業先生から授業を受けました。仕事内容やその思い、そして和歌山で働くということについて知り、考える1日。その様子をレポートします。

職業先生たちの熱意が体育館いっぱいに広がる

生徒たちの朝の登校時間。この日は、授業の準備を万端にした職業先生たちも続々と中学校にやってきました。生徒たちに和歌山で働く社会人として働く醍醐味を伝えたい。そんな熱意溢れる19人の職業先生とボランティアスタッフ、そして校長先生たちが体育館に集合し、当日の流れの説明を受けた後、朝礼で円陣を組むところから元気よくスタートしました。学校現場のニーズを汲み取り、多種多様な業界のプロフェッショナルをひとつのチームとしてまとめ上げる。未来スクールがこれまで培ってきた独自のコーディネート力がこの大規模な開催を支えています。

さあいよいよ未来スクールの始まりです。大勢の生徒を前に、まずは代表の山本理恵が「今日は一日、一人ひとり自分の将来についてじっくりと一緒に考えていきましょう」と挨拶を行いました。そして職業先生がひとりずつ自己紹介を行いました。職業先生も、生徒たちを前に授業を楽しみにしている様子が伝わってきます。最後に生徒会長が生徒を代表して「今日は様々な知識を得られることを楽しみにしてきました。社会に自信を持って出て行ける第一歩になるようにしたいです」と挨拶がありました。

未来スクールは、生徒たちの希望に応じて数ある職業先生の職種から2人選んで授業に参加します。この日は1時間目にオリエンテーションがあり、2時間目と3時間目に職業先生の授業がありました。

授業の様子をレポート!① ウェブプロデューサーの仕事

ここで少し授業の様子をお届けしましょう。まずは株式会社BEE所属の松嶋すゞ華さんによるウェブプロデューサーの仕事についての授業です。松嶋さんは岩出市出身。まずは、自分自身はどんな中学生だったかを振り返りながら自己紹介が行われました。そして勤めている会社と、会社の代表者のプレゼンがありました。会社では具体的にどんな人が勤めているか、会社はどの場所にあるのか、会社のポリシーや、特色ある事業内容の実例の紹介がありました。

松嶋さんはウェブプロデューサーのやりがいを「まだ世に出ていないデザインやサービスを目にすることができるし、お客様の喜ぶ様子が感じられる。でも正解がない、1つとして同じ提案のない仕事。でも妥協をしないで学び続ける姿勢を大事にしてます。勉強が苦手だとしても何か1つでも一生懸命になれるものを頑張ろう」と話しました。

後半は体験授業で「紀之川中学校のウェブサイトをつくろう」を行いました。小学校6年生に向けてホームページのコンテンツとメインビジュアルを考える体験をグループで行いました。インパクトのある写真や訴求力のある動画、身近な部活を人気ランキング形式にするなど、小学生により興味を持ってもらえる内容を検討しました。

最後の10分は質問の時間です。「デザインは見やすさ、それともインパクト。どちらを重視しますか?他には何を重視してますか?」といった具体的な質問も出ました。「会社の課題は?」という質問には「AIがもっと発達するとデザイナーの仕事が減ることになる。デザイナーになりたい人はハードルが高くなっていると思います。AIにはできない仕事をするように頑張っています」と松嶋さんは答えました。

授業を受けた1年生の生徒に感想を聞きました。

「私は絵を描いたりデザインを考えるのは大好きです。だからデザイナーの仕事がAIに取られてしまうかもしれないと聞いて、少し残念に思いました。授業を聞いて、AIが発想もできないようなものをつくりたいという向上心が生まれました」。

授業の様子をレポート!② ものづくりの仕事

4時間目は和歌山県高野口町にある妙中パイル織物の妙中さんによる授業にお邪魔しました。パイル織物とは表地に毛を生やした織物と編み物のことです。妙中パイルは「パイル織物業界で世界No.1を目指す」を掲げ、糸を仕入れてから織物に織りあげ、仕上げ加工までを手がけています。高野口町のパイル織物は明治時代から始まり、日本一の生産高を誇ります。電車や新幹線のシート、また国会議事堂の椅子、世界の一流ブランドの洋服など、高級織物の代表格として有名です。「パイル織物だけをつくっている織物の産地は世界でも高野口町だけ」と妙中さんは言います。

高品質のパイル織物をつくる上で一番大事なのは糸を早く結べるようになること、早く細やかに正確な作業を行うこと。1人で最大10台もの機械をみなければいけません。そして機械をきれいに清掃すること。生地を見て糸切れや織間違いなどをいち早く発見すること。機械を一人前に扱い美しい織物が織れるようになるまで5年から10年はかかるという職人技。

そのスタートになるのが織物をつくる上で欠かせない「糸を結ぶ」作業。体験の時間ではこの糸結びに挑戦しました。「難しい」と言いながらしばらくすると結べた人がちらほら。一度コツを掴んだらどんどんできる人が増えていきました。

最後の10分で、生徒たちからの質問がありました。「1日の生産量はどれくらいですか?」や、「仕事で大事にしていることは何ですか?」といった質問が出ました。また「会社の課題は?」という質問に対して「若い働き手がいない。生地をつくる技術を体得するには時間がかかる。働き手の人も高齢化してきつつあるので、若手の後継者への教育が課題です。また現在は円安が進行しています。原材料の糸や染料は海外から輸入しているので、原材料の原価が上がっていて大変です。製品をいますぐ海外に輸出ができたらいいのですが、そこまで手が回らない。昔は製品をつくれば売れた時代がありましたが、今は何をつくってさらにどのようにPRするのかも課題です」と妙中さんは答えました。

授業を受けた2年生の生徒に感想を聞きました。「僕は高野山は行ったことがありますが、その麓でこんな産業があることも知りませんでした。しかも、国会議事堂とかNHKホールの椅子に使われる織物が和歌山でつくられているのも知らなかったですし、パイル織物の産地は日本でも和歌山だけだと聞いて驚きました。若手の従事者が少ないというお話だったので、日本の織物の技術がなくなってしまうのかなと少し心配になりました。僕も和歌山の文化を継いでいきたいと思いました」。

校長先生からみた未来スクールのポイント

紀之川中学校の植西仁美校長先生にもお話を伺いました。

植西:未来スクールは、これからの子どもたちに不可欠な「コミュニケーション力」や「ゼロから 形にする力」を育んでくれる場です。ただ用意された正解を答えるのではなく、自分の頭で 考え、新しい価値をつくり出す。これは机上の勉強だけでは、なかなか経験できない貴重な学びです。

今の中学生は、親や先生以外の社会人と接する機会がどうしても不足しています。周りの大人が先回りして動く環境に慣れてしまうと、つい「やってもらって当たり前」という感覚になりがちですが社会では通用しません。だからこそ、若いうちから多様な大人と関わり、 自ら発信する姿勢や礼儀を学ぶ必要があると考えています。

このプログラムの素晴らしい点は、「事前学習・授業・事後学習」という体系的なサイクル にあります。あらかじめ考え、本番を体験し、再び振り返る。このサイクルを回すことで初めて、深い納得感と「新たな問い」が生まれます。特にこの事後学習こそが、子どもたちの好奇心を次へつなげる大切な時間になるのです。

来年度から本校では、1年生でこの未来スクールを受講し、2年生で職場体験に臨むとい う一貫したステップを導入する予定です。1年生はまだ社会に馴染みが薄いかもしれませ んが、自分たちも社会の一員であり、多くの仕事に支えられていることを肌で感じてほしい と思っています。

社会は、さまざまな人の仕事によって支えられています。中学生という多感な時期に、自 分が生まれ育った地域を知り、それらを支える仕事を意識することは、自分たちの学びが 暮らしや社会にどのように結びついていくのかを知る良い機会です。地域を支える大人た ちから「知っているようで知らなかった社会」の扉を開けてもらい「キャリア教育」を充実させていきたいと思っています。その新鮮な驚きは、きっと彼らの心に深く、長く残っていくはず です。

(先生の言葉ここまで)


紀之川中学校では今後事後学習でさらに学びを深め、3月にはその成果発表が行われる予定です。次回は子どもたちの学びと成長の様子をお伝えします。

写真撮影: ILM

今回職業先生として参加した企業一覧

117グ ループ 、(同)es.company、紀州技研工業(株) 、(株)グリーンスマイル 、(株)信濃路、(株)BEE 、菱岡工業 (株) 、(株)プロスキル 、三井住友海上火災保険(株)、(株)渡辺産業運輸 、休暇村紀州 加太 、妙中パイル織物(株) 、デュプロ精工(株) 、(学)IBW美容専門学校 、日本赤十字社和歌山医療センター、伏虎リハビリテーション病院、ふとんのにしなか 、三木理研工業(株) 、(株) RaysFactory 

Written by

ヘメンディンガー綾

ヘメンディンガー綾さん

編集者・フリーライター。より良い教育環境を求めて、大阪府から和歌山市内に移住。歴史的・文化的な遺産と自然の恵みが溢れ、人も温かくて優しい和歌山で育児と仕事を楽しんでいます。

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