未来スクール2024キックオフ開催! 中学校 校長先生から評価の声をいただきました。
地域で働く大人が職業先生となり、中学生に働くことと生き方を伝える未来スクール。2024年6月3日、和歌山城ホールにて2023年度の開催報告会と2024年度のキックオフイベントが開催されました。イベントは未来スクール代表の山本理恵による開会の挨拶で幕を開けました。
2023年度は和歌山市内6校873名の中学生に授業を実施
未来スクールが目指すのは「すべての子どもたちが自分らしく未来を切り拓くことができる社会」。その背景には中学生が自分を主人公として将来を考える教育的機会が少ないことが課題として挙げられます。またこうした教育は家庭だけで行うのではなく、学校や地域が連携することが不可欠です。
未来スクールは2014年にスタートし、2022年からは義務教育課程である中学校の総合学習の時間を活用して、応募のあった和歌山市内の公立中学校で継続して授業を展開してきました。
「手術の糸結び」と聞くと、みんな「えー!」と言いますね(笑)。糸結びは僕らが研修医時代にめちゃくちゃ練習する手技のひとつです。見ているだけではなかなかできないので、僕とアシスタントが時には生徒の手をとってやり方を教えます。手を動かし始めると10分ぐらいで数人ができてくるようになります。するとできた子が別の子を教え始める「連鎖」が始まります。中にはずっと編み続ける子もいるし、家に帰ってお家の方に「今日はこんなことをやった」と伝えてくれる子もいるそうです。
山本:今回はじめて生徒の意識調査をとりました。「自分には良いところがある」といった項目や「夢や目標がある」「なりたい大人に出会えた」など未来スクールの開催前と開催後を比較すると、それぞれ数値がアップしていることがわかります。こうしたことから、自己肯定感と将来への目標意識が上がったことが見えてきました。
また今年度は貴志中学校と協働で開発した教材と指導教員のティーチャーズガイドも使って6校すべての学校に同じ質の教育を届けることができました。また職業先生の授業づくりサポートも徹底することができました。応援いただいた企業は34社、341万円のご寄付ご協賛をいただき未来スクールプログラムを届けることができました。
私たちの思いは「すべての子どもたちが自分らしく未来を切り拓いていく社会をつくる」です。そのために、子どもたちが将来を主体的に考える教育的機会を提供していきます。しかし課題は持続可能な提供の仕組みをどうやってつくるかです。未来スクール運営は90%が民間企業様からの寄付協賛で成り立っています。継続するためには職業先生や学校、企業の連携が欠かせません。引き続き、新しい教育の仕組みを共に作ってくださる職業先生やご寄付ご協賛で応援くださる企業様を募集しています」。
開催中学校から成果発表
続いて、和歌山市立有功中学校の北野校長と和歌山市立西浜中学校の芝校長から、それぞれ未来スクール開催の成果をご発表いただきました。
北野校長先生:前任校の和歌山市立日進中学校で未来スクールを開催させていただきました。なぜ未来スクールをお願いしたかという背景からお話しします。今の子供たちは挨拶もしっかりできて、性的マイノリティ(LGBTQ+)の方々に対しても共感性があり、個性を重視するという良い面があります。またスマホやタブレットの機器の操作は時に大人よりも上手です。しかし一方で抑うつの傾向や不登校、社会的引きこもり、未就労、非行、犯罪、スマホゲームに依存するといった問題もあり、社会的側面は精神的な成長が伴わず、将来に希望を持てない子も増加傾向にあります。こうしたデジタル化とグローバル化が進んだ現代の社会で子どもたちが成長していくには、自分で情報を収集し、整理・分析して、自ら考え、問題を解決する力が求められます。子どもたちにはこうしたことも体験させたいなと思い、探求型キャリア教育である未来スクールをお願いしました。また近年大学のAO入試ではプレゼンを求められることもありますので、本校では学習の最後には学んだことを1人ずつプレゼンするところまで行いました。※
探求型学習がうまくいくと、生徒の思考力、判断力、表現力が高くなり、やる気が高まって学力が上がるという調査結果が出ています。そして何よりも自分なりの社会とのつながり方を学ぶことで意識が進路につながります。
中でも私が感動したのは、各企業さんの職業先生が子どもたちのために授業の練習をしてくださり、教師よりもわかりやすいプレゼンをしてくださったことです。子どもたちは将来像を具体的に描くことができ、「和歌山にこんなすごい企業があったんだな」と感想を述べていました。おかげさまで生徒たちは大きく成長することができたと思います。有功中学校でも継続して開催できるように頑張っていきたいと思います。
※事後学習のプレゼンは各校任意。
芝校長先生:本校は、『創造力に富んだ心豊かでたくましい生徒』の育成を教育目標に掲げており、「たくましさ」とは子どもたちが色々な人と関わる中で夢を持ち、その夢に向かって頑張っている時に育つのではないかと考えています。コロナ禍において、学校では職場体験学習の実施が難しい状況が続き、それに代わる取り組みを探していました。ちょうどその頃に未来スクールの話を頂きました。資料を拝見するとプログラムが非常にしっかりしていて私がイメージしたものと合致していると思いました。「これを実施できれば子どもたちは変わるだろうな。夢や目標を持つきっかけになるだろうな」というイメージができていたのですが、予算をどう工面するかについてPTAに相談しました。たまたまPTAの会長さんが未来スクールの職業先生をなさっていたこともあり、すぐにPTAのバザー会費から予算を捻出していただくことが決まり、感謝しました。
未来スクールでは、事前指導からしっかり取り組むことができ、当日の職業先生の授業中、子どもたちは前を向いて自分からのめり込んで話を聞いていました。その姿がとてもいいなと思いました。
実施後、子どもたちからは一様に「楽しく学べた」「この授業を受けて良かった」という声が上がりました。中にはこんな感想がありました
「今まで、親や先生が仕事や将来について話しているのを聞いても理解できなかったのですが、職業先生のリアルで具体的な話を聞いて、考え方が少し変わりました。人それぞれの生き方があるけど、自分の将来にも参考になりました」。
これまで理解できなかったことが理解できるようになった、つまり未来スクールの職業先生のお話はとてもわかりやすい、という感想でした。
学校の教師は社会の中の「職業」について経験が乏しいため、教師が話をしてもなかなか伝えることが難しいのが現状です。また中学生は高校や大学に進学することがひとつの夢になっていて職業観がまだまだ薄いのですが、未来スクールは社会とのつながりの中で社会性や職業観を育むのにとても効果的だと思います。授業の後は、学習に前向きでなかった子たちも「将来働くために今頑張らないといけない」という意識が芽生えているようです。今年度、本校では1年生で未来スクールを開催します。そして来年の職場体験学習では自分たちで取り組めるように計画を進めています。
西浜中学校では未来スクールをずっと続けたいと思っていますし、さまざまな職業先生に来ていただいて、多様な子どもたちに夢を与えてもらえたらと思います。
イベントではこの後、参加者らが今日の学びを一緒に振り返る時間が設けられ、交流を深めつつ、今年度への実施に向けて意欲を高めました。
未来スクールは2024年度はさらに実施校が増え、和歌山市内の中学校8校、合計1266名の中学生に授業を届ける予定になっています。