未来スクール事務局
〒640-8232 和歌山県和歌山市南汀丁29
(学校法人山本学園内)
Interview

さまざまな職業に触れて選択肢が増えるように。

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株式会社Rays Factory代表の吉岡理恵さんは、イルミネーションデザインを中心に、空間演出からグラフィックデザインまでを担うデザイナーです。和歌山の冬の風物詩「フェスタ・ルーチェ in 和歌山マリーナシティ」(以下、フェスタ・ルーチェ)や、和歌山市内の目抜通りを日本一のイルミネーション数で彩る「KEYAKI LIGHT PARADE by FeStA Luce」に始まり、全国のイルミネーションデザインを手がけています。未来スクールでは2022年から職業先生として、こうしたプロジェクトのノウハウを授業してくださっています。

未来スクールとの出会いから、職業先生になるまでの経緯を教えてください。

吉岡:とある講演会で未来スクール事務局の方と出会った際に、取り組みの内容を聞きました。私は学生時代、福祉や児童福祉を専攻していて、その後社会人になって会社勤めをしていた時に初めて「空間デザイナー」という職種に出会ったんです。もしもっと早い段階で知っていたら仕事に対する選択肢が増えていたと思いますし、もっと早くからこの道を歩んでいたという思いがあります。

未来スクールの良いところはいろんな職業の方が職業先生となり、しかも学校の授業の一環としてお話をするという点。私も未来スクールが子どもたちの選択肢を増やすひと役になれたら、と思って参加することになりました。

職業先生の授業ではどのようなことを行なっていらっしゃいますか。

吉岡:例えば空間デザインの仕事と言っても、会場となる空間づくりだけではなくて、イベントを告知するためのポスター制作など、とても幅広いものです。授業では中学生のみなさんに理解してもらいやすいように、イルミネーションのプロジェクト「フェスタ・ルーチェ」のデザインをつくると題した体験をしてもらいます。サンタクロースやトナカイなど、クリスマスをモチーフにした絵が描かれた白い紙を配って、ブラックライトを照射すると光るクレヨンで塗り絵をしてもらいます。塗り絵をするときは部屋を明るくして、終わったら真っ暗にする。すると、色を塗った部分が色とりどりに光ります。自分が描いたものが光るという体験を通して、光にはどんな効果があるのかを感じてもらっています。

生徒にとっても馴染みのある「フェスタ・ルーチェ」が擬似体験できるのは印象に残る楽しい授業ですね。印象に残っている生徒さんはいますか?

吉岡:中学生ともなると、ちょっと斜に構えて「塗り絵?」というリアクションがたまにありますが、塗り始めると楽しみながらとても一生懸命塗ってくれます。授業が終わった翌日に生徒さんが私のインスタをフォローしてくれることもあって、嬉しくなりますね。

講話の授業ではどのようなことを伝えていますか?

デザインという仕事は、多くの方との協業で成り立っています。例えば「フェスタ・ルーチェ」も最初はデザインのラフを紙やiPad上で描くところから始まります。でも実際にイルミネーションを施工するのは職人さんが行います。またそのためには詳細な設計図が必要で、パースや図面は専門の方に依頼します。またイルミネーションも取りつける木によって、美しく見える取りつけ方が違うし、1本の木に何灯あればいいか、といった専門的なことはイルミネーションのメーカーがこれまでの経験と実績から考え出します。全体の景観や和歌山という街の特徴や景観や人の流れなども踏まえ、全体のコストなども含めて協業しながら複数人がチームになって考えていきます。ですから私が一番大事にしているのはチームワークとお伝えしています。

未来スクールで関わって何か変化はありましたか?


吉岡:これまで大人に向けてビジネスの話をする機会はありましたが、中学生に話す機会はなかったので、仕事の内容をよく噛み砕いて話さないといけない。ですから資料づくりの段階からすごく考えました。自分の仕事を振り返って、それが何かの役に立ってるのかを振り返るいい機会になりました。

現代はAIが浸透し、私たちを取り巻く環境が大きく変化しています。このような時代に学ぶべき大切なことは何でしょう?

AIはいろんな情報の集合体で、期待するようなオリジナルティはないと思っています。私自身も仕事でAIを使うことは多々あります。しかし、情報の掛け合わせでできるデザインでは無く「私だから生み出せるデザイン」を努力し続けていれば、AIとうまく共存できるかと思っています。

現代は特に「アルゴリズムの仕組みからなるフィルターバブル」や、「エコーチェンバー現象」と言って、SNSなどインターネットの世界で自分と似たような意見や思想が集まって、同じような情報ばかりを繰り返し見聞きしているうちに、その考えが正しいと信じる傾向が強いそうです。それらの課題とされている思考の偏りや情報遮断、誤情報を信じるといったことがとても怖いなと思っています。

私自身はデザイナーなので、色んなアートやデザインの展示、海外のイルミネーションを見にいく機会をつくっていますが、その際に個人的には興味が薄くても流行っているものや、人がたくさん集まっている場所の理由を考えたり、とにかく自分で足を運び、目で見て触れて経験値を増やすことを大切にしています。

未来スクールに期待すること、こうなって欲しいという要望がございましたらお聞かせください。

吉岡:仕事で他府県の企業さんとも一緒にお仕事をさせてもらいますが、県外で活躍する和歌山出身者で、「地元和歌山のために何かをしたい」という思いを持った方と時々お会いします。このような方も何らかの形で関わっていただけるような仕組みがあるといいですね。

いまの中学生に伝えたいメッセージをお願いします。

吉岡:これから社会に出るみなさんには、いろんなものを知ってほしいと思います。例えば習い事に関してでも、まだ小さいうちは「一つの競技に特化するより、複数の運動・スポーツを経験する方がスポーツ科学・発育発達理論の観点からも望ましいと聞きました。その時の短期間の経験でも何十年後かに生きてくることがあるそうです。ものや体験だけではなく、人間関係においてもそうです。学校生活の中で、もし辛いことやうまくいかないことがあったとしても、実際の社会はもっと広いものです。今、自分がいる狭い世界を当たり前だと思わなくていいんだよ、と伝えたいですね。

Written by

ヘメンディンガー綾

ヘメンディンガー綾さん

編集者・フリーライター。より良い教育環境を求めて、大阪府から和歌山市内に移住。歴史的・文化的な遺産と自然の恵みが溢れ、人も温かくて優しい和歌山で育児と仕事を楽しんでいます。

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