未来スクール事務局
〒640-8232 和歌山県和歌山市南汀丁29
(学校法人山本学園内)
Interview

未来スクールの職業先生は、仕事を通して「生き方」を見せてくれる存在。

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未来スクールの発足当初からその存在を知り、コロナ禍において「子どもたちが社会との接点を持てるように」と、未来スクールの開催を実践してきた和歌山市立貴志中学校の鷲山純子先生。鷲山先生は英語科の教諭として、また学年主任をされながら日々子どもたちを中心に考えた指導にあたっています。

未来スクールとの出会いについて教えてください。

鷲山:前任の伏虎中学校(現 和歌山市立伏虎義務教育学校)に勤務していた時に、未来スクールがイベント形式で開催されることになって、私が担任を持っていたクラスの教室を使うことになりました。その時はイベントが週末に開かれたので、授業の様子は見ていませんでした。それから2年後、伏虎中学校が伏虎義務教育学校として生まれ変わり、担任を受け持っていたクラスに未来スクールからゲストティーチャーをお招きして、職業についてお話を聞かせてもらうということを行いました。

職業先生の授業について、どのような点が印象に残っていますか?

鷲山:先生がその道のプロの方ばかり。その時は書店の方にお越しいただいて読み聞かせをしていただいたり、医師の方に来ていただいて手術の縫合のお話を聞かせていただいたりしました。私たちが知り得ない生の情報を子どもたちにお話していただけるので、やはりプロの方にお話を聞かせていただくのはとても大事だなと思いました。

その後、2020年からは貴志中学校で教鞭をとられるようになり、コロナ禍に突入しました。その時に未来スクールに授業のご依頼をくださった経緯もお聞かせください。

鷲山:キャリア教育は中学2年生で職場体験をするということが定められています。しかし当時コロナ禍となり「職場体験ができない」という事態になりました。このままでは生徒たちが先生や親以外の大人と接することなく卒業してしまうということになる、と危機感を感じました。そこで未来スクールにご連絡したら、「何人職業先生を派遣しましょう」と言ってくださいました。こちらは「1クラスに1人お話してくださればありがたいな」と思い、たずねると「20人ぐらいですか?」と言ってくださって驚きましたが、ありがたく感じました。そして最終的には12名もの先生方にお越しいただきました。

当時は今のように教材はなかったのですが、みなさん熱量がすごくて。私は教師として日々授業をしますが、自分の授業に向かう姿勢を見直さないといけないと感じるぐらい、力を入れて授業をしてくださっていて衝撃を受けました。また職業先生もドキドキしながらだったと思うのですが、それでも一生懸命伝えようとしてくださっているのがすごく伝わってきました。ですから生徒たちも真剣に聞いていましたね。

未来スクールの職業先生は自分の仕事に生きがいを感じて働く大人。そんな大人は中学生にとってロールモデルになりますか?

鷲山:そうだと思います。未来スクールの職業先生はみなさん仕事に誇りを持っておられて、ご自分の仕事が大好きな大人ばかり。そんな方からお話を聞くことは、子どもたちが、仕事や働くことについてマイナスなイメージではなく、魅力だと感じるようになる機会となります。2年生で職場体験に行く時に「未来スクールの先生の職場はないの?」と生徒に聞かれることもありました。職業先生として関わってくださった大人は、生徒にとってすでに知り合いの大人という存在になっています。

また、私自身にも発見がありました。未来スクール代表の山本さんが「子どもたちがいずれ和歌山を出ていくこともあるかもしれないけれど、素晴らしい企業が和歌山にあるんだと知って、和歌山を誇りに思ってもらいたい」と最初におっしゃったんです。おかげさまで生徒たちも、私自身も自分たちが生活している地元や、地元の企業に関心が向くようになったと思います。

これまでは、「学校が地域と連携する」というのは、保護者や学校の近所の方をイメージしていました。でもこのように地域の企業の方が関わってくださることで、「私たちだけで生徒を育てているんじゃないんだ」と感じました。外の方がこれだけ生徒に関わってくれることって、そうそうないですし、本当にありがたいことだと思います。

貴志中学校では昨年度から1年生で未来スクールの授業を受けて、2年生は職場体験をされていると伺っています。未来スクールと職場体験はどのように違いますか?

鷲山:職場体験の良さは仕事の生の現場を体験できることですが、未来スクールは、働いている人がどんな想いで仕事をしているのかがわかります。仕事を「しんどいもの」と捉えるのではなく、生き方を感じ取って、「私はどんな仕事を見つけたら、あの先生たちのような人生を送れるのかな」と希望を持って考えるようになるんです。今年の 2 年生の職場体験は、生徒たちも楽しみにして行くことができました。そのおかげで職場体験 が大変意味のあるものになり、これまでとは全然違ったものになったと思います。

未来スクールの導入を検討されてる学校や教員の方にメッセージをお願いします。

鷲山:授業の前に、学校側でどのタイミングでどれほど準備が必要なのか、不安に思われる先生方 もいらっしゃるかもしれませんが、未来スクールでは、当日の授業を“職業先生にお任せする”スタイルをとられています。子どもたちにとって最も生きた学びとなる授業は、やはり職業先生が直接行ってくださるものだと感じています。専用の教材も用意されているため、事前学習もしやすく、学校側が行う準備は、生徒への希望調査を実施して受講する職業先生を割り振 ることや、教室の準備を行うなどです。


また未来スクールでは事務局が窓口となり、生徒に授業を提供したいという職業先生を学校へコーディネートしてくださるため、学校としては非常にありがたく思っています。実際に取り組んでみると、子どもたちの学びの幅が広がり、キャリア教育としての深い意義を強く実感できるはずです。一度経験していただければ、その良さがきっとわかると思います。

未来スクールに期待することはありますか?

鷲山:生徒たちは1人につき、2名の職業先生の授業を受けさせてもらえますが、できればもっと少人数制で、できるだけ多くの職業先生の授業を受けさせてもらえたら嬉しいです。それぐらい、これからもずっと取り組みたい授業です。

(肩書きは2025年11月取材時のもの)

Written by

ヘメンディンガー綾

ヘメンディンガー綾さん

編集者・フリーライター。より良い教育環境を求めて、大阪府から和歌山市内に移住。歴史的・文化的な遺産と自然の恵みが溢れ、人も温かくて優しい和歌山で育児と仕事を楽しんでいます。

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